窯の蓋を修理する

田舎のパン屋さん

4/29金曜日のこと。

窯入れの出だしに窯の蓋を壊してしまいました。

高さ1mほどの高さから落としてしまい、石の板は一発で粉々に。

車をぶつけた人ならわかると思いますが、その瞬間なんとも言えないいや~な感覚、後戻りできないことを自覚せざるを得ない後悔の念を感じました。

もちろん蓋がなければパン焼きもままならないのですぐさま修理です。

今日はその顛末を。

落下して無惨な姿に

もともとの蓋はお隣の石材屋さんから使っていない御影石の石板を譲っていただき、自分でカットして作ったとてもシンプルなものです。

おそらく一般的なのは鉄製の蓋ではないでしょうか。

どうして石の蓋にしていたのか。一つには当店の窯は長野の「わざわざ」さんの窯を参考に作っていましたのでそれを真似たこと。だってかっこよかったんだもの。

あと、鉄製にすると鉄工所などに外注しないと自分では加工できなかったこと。石ならグラインダーで加工できますので。経費削減です。

さらに、蓄熱力も鉄より優れています。

もちろん割れる懸念はありました。現に前の窯のときもパッカーンと割ってます。加熱された石は衝撃に弱いのです。

 

前回割れたときはボルトの直径の溝を切り前後から鋼材で挟むことで修理しました。

この時の蓋はなんだか処分できなくて置いてあったのですが、今回割れたその日と翌日にとりあえず使うことで助かりました。

さて今回は、写真を見てもらえばわかりますが、細かく割れたので前回の方法が使えません。オシャカです。新しいものを用意しなければなりません。

まず考えたのは前回同様石の蓋。しかしお隣斎田石材さんは忙しくされていて、たかが石板一つで手間どらせるのは気が引ける。

というのと「これコンクリートでできるんちゃうかな?試してみよっかな?」といつもの実験癖がでてきてしまいました。

コンクリートを使うメリットは、まず入手しやすいこと。そもそもホームセンターで探すので。壊れてもすぐに買いに行けます。なおかつ安価。

それとずっと気になっていたコンクリートの熱への耐性も試すことができます。

石のときもすぐに壊れるのではないかと思っていたのですが、熱で壊れることはありませんでした(若干反りましたが)。たしかレンガやコンクリートの耐熱温度は200℃くらいだったと思うのですが、常時その熱にあたっているかとかいろんな要素で変わってくるのだと思うのです。もし蓋としてある程度の強度を保てるのであれば他の使い道も広がるような気がします。

というわけで。ホームセンターへと車を走らせます。

お目当ては盆栽などを置くためのコンクリートの棚板。U字溝や束石などを売っているコンクリート製品の売り場にも「コンクリート平板」なるものはありますが、これだと300×600と窯の蓋にするには若干小さい上、厚みもあって不向きなのです。

これまでしょっちゅうホームセンターへ行って目にしていたもののどこのホームセンターだったかは覚えてなくて片っ端から行ってみました。

が、どこに行っても通常のコンクリート平板しか見つからないんですね。おかしいな~確かに見たことあるんだけどな~と最後に訪れたのはお隣能勢町のコ◯リさん。

結果的にはあったんですよ、ココに。6件目にして。サイズは300×900×40。

道中「これで見つからなかったらステンレスで中空の板状のものを作ってみようか」と構造をずっと考えてましたね。だってこのお店、今まで行った中で一番小さくて望み薄だったんだもの(コ◯リさん、すみません)。

いよいよ制作。

まずはダンボールで型取り。擦れることなく、かつ開閉のための指が入るスペースをとってサイズを決めます。

おおよそを書いてハサミでカットを繰り返す

このダンボールをコンクリート板に合わせて線を引きます。

なんと、高さがギリギリです。空間を埋めたいところですがしかたありません。ギリギリで妥協します。なのできれいなかまぼこ型になりませんでした。

表、裏両方から。防護メガネを忘れずに。

あとは線にそってダイヤモンドのディスクを装着したグラインダーでカット。風向きを考えないと粉塵を浴びることになります。

面取りとともに底部を少し斜めに削ることを忘れずに。これをしないと倒れやすくなります。

はい、これで完成。

最後の仕上げ前。上部が丸くカーブしてない・・・。

蓋を新しくしてもうすぐ1ヶ月。

今のところ問題ありません。ギリギリだった上部に少し隙間ができていますが熱や煙が出てくることもありません。

一番気になっていたのは強度を高めるために鉄筋が入っていたことです。

コンクリートと鉄では熱による収縮率が違うだろうからここから割れるのではないかと。

最悪ヒビや亀裂が入ってもその鉄筋のおかげで崩れることはないだろうなとは思ってましたが、今のところヒビが入る気配はありません。

どこまでもつかわかりませんが、「コンクリート使える」「鉄筋入れても問題ない」という実感を得ています。

とても完成形とは思えない窯の風貌

壊れて修理する過程は工夫する楽しみがあって嫌いではないけど、さすがに他の用事がたてこんでるときは困るなぁ。災害と一緒でいつ起きるかわからないんですけど。できる限り「壊れにくい構造にする」という予防策、つまり防災が大切ですね。

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