8月の話です。ちょっと長くなります。
今年のわたかまさんの展覧会のための打ち合わせを夏季休業中にしたのです。ちょっといろんな確認のためもあって窯を稼働しパンを焼くことになりました。約一か月ぶりです。
その日は11:30に集合でお昼を食べることになってましたので、9:00くらいから窯の準備を始めました。そういえば休みに入って全然窯の手入れをしてなかったなぁなんて思いつつ蓋を開けて中を覗いたところ、昨年4月に窯が崩壊した時からちょっと崩れかかっているレンガ(耐火レンガ)が目につきました。
ちょうど天井アーチの真ん中、前後左右から見てもど真ん中のレンガです。それが斜めになってて落ちそうに見えるのです。こんなに落ちてたかなぁ、と思いながら下がっている方を棒でクイっと触ったところ・・・
どさっ!
・・・(沈黙)
かろうじて引っかかってたんですね。営業中じゃなくてよかった。でも今日焼けないかも、連絡しないと、仕込んだ生地がもったいないな、直せるかも・・・いろんな考えが頭の中をぐるぐる。
原因としては、そもそもそのレンガのテーパーが浅かったこと、前回修理の時に目地を埋めるものを何もつけなかったこと、が挙げられます(テーパーとはレンガの斜めカット加工の度合いのこと)。いつか落ちるかもとは思っていたので不思議はありませんでした。それよりよくもったものだと思います。
落ちたということはレンガの幅より隙間が大きいということなので下から押し込んでも無駄です。何か隙間を埋める工夫をして上からハメこんでやらねばなりません。とにかくまずは上からですので、窯外部に回り、レンガの層を覆う粘土の層をはがすことからです。
幸い、というかなんというか、前回修理時に上から塗った粘土は粘土というより田んぼの土そのまま。そのためまるで亀の甲羅のような大きなクラック(亀裂)がたくさん入っていて、いわばブロックごとに分かれている状況。このブロックを該当箇所のみはがす作業でしたので、わりと簡単でした。
しかし問題がありました。ど真ん中でしたので、ちょうど真上にはダンパー(煙突の空気量を調節するため仕組み)用の管があって上からではレンガを入れることができないのです。う~ん。う~ん。困っているのに、こういうときほど楽しくなる。なぜでしょう。あばれはっちゃくなみに逆立ちをして考える。ことはしませんが、ひらめきました。
下から吊り上げればいいのです。釣り上げた状態で固定し隙間を埋める。しかし、そんなにうまくいくだろうか。経験上、思いつきの70%はうまくいかない。
何で吊り上げよう。細くて、強度があるもの。・・・針金か。と思って針金を探しに行きましたが、倉庫の片付けのどさくさで見つからない。代わりにトタンの端切れみたいなのを発見。こっちのほうが薄くていい。
トタンで2本の帯のようなものをつくり、それを首吊りのわっかみたいにしてレンガを持ち上げる。トタンの厚みがあるのでそれでうまくレンガが引っかかったので、そのままトタンごと粘土で固定して、粘土ブロックをもとあったように埋め戻して、なおかつクラックを泥で埋めて完了。思いつきのわりにうまくいきました。トータルで約1時間ちょっとの作業でした。
これもいつまで持つかわかりませんが当面は大丈夫でしょう。故障のたびに経験値は上がっていく。やってはいけないこと、すべきことがはっきりしてくる。いつか新しい窯を作るときに生きてくると思います。
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